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日本国憲法をつくった男 宰相幣原喜重郎 塩田潮 [ノンフィクション]

戦後歴代33人にいる日本の総理大臣で、思い浮かぶのは誰だろうか。サンフランシスコ講和条約を結んだ吉田茂、列島改造論の田中角栄、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作。挙げていく中で、この人の名前はなかなか出てこないのではないか。戦後2番目の首相となった幣原喜重郎である。衆議院議長も務め、戦後の政治家の中でただひとり、三権の長の二つのポストを経験したにもかかわらず、「忘れられた宰相」となった。それは首相在任期間の短さに加え、大衆的人気とは縁遠い地味な存在だったからだろう。

だが、幣原が日本の歴史を語る上で欠かせないのは、日本国憲法草案に関わった時の首相だからである。本書は幣原の生い立ちから外交官としての生き様を膨大な資料から丁寧に追いながら、日本国憲法草案の舞台裏に迫る。カギになるのは天皇制の維持と戦争放棄・非武装だ。それは連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーと幣原の二人きりの会談の中から生まれた。天皇制が維持できなければ日本は大混乱に陥ることはマッカーサーも承知していた。その代償としてどこの国もなしえなかった平和国家を掲げることは切っても切り離せない事案だった。

憲法改正作業は5カ月足らずの猛スピードで進められた。なぜなら、強力な権限を持つ連合国の極東委員会が終戦翌年の2月に正式発足するからだ。加盟国のソ連やオーストラリア、ニュージーランドは天皇制維持に強く反対している。憲法改正作業が遅れれば、総司令部と日本政府による憲法草案も吹っ飛ぶだろう。その前に憲法を改正して既成事実化しなければならない。焦る総司令部とさまざまな国情に身動きが取れない日本政府のやりとりが生々しい。

さて、「幣原外交」と世界各国から称賛された彼のモットーは善隣外交だった。中国との協調、国際連盟脱退や日独伊同盟への反発。二・二六事件ではその政治姿勢から命を狙われた。平和を唱えることが「弱腰」と言われた時代に、彼は果敢にも信念を通した。その延長線上に今日の日本国憲法が出来上がったと言える。

マッカーサーは後年、幣原の言葉としてこう語った。「世界はわれわれが実際に即さぬ夢想家であるといってあざけり笑うでしょうが、百年後にはわれわれは予言者といわれるようになるでしょう」。憲法9条は、幣原の提案だったと主張する。これについて幣原は否定している。二人とも故人となった今、真相は霧の中だ。


日本国憲法をつくった男 宰相 幣原喜重郎 (朝日文庫)

日本国憲法をつくった男 宰相 幣原喜重郎 (朝日文庫)

  • 作者: 塩田潮
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫



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