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夜行 森見登美彦 [文学]

京都市上京区の堀川にかけられている「一条戻橋」は、死者の世界と生者の世界を結ぶ橋だと言われている。平安時代、漢学者三善清行の葬列がこの橋を通った際、駆け付けた息子の浄蔵が棺にすがって祈ると、清行が雷鳴とともに一時生き返ったという。また、陰陽師の安倍晴明は式神をこの橋の下に潜ませ、予言や占いの際に操ったと伝えられる。いわくつきの橋だ。

当時の古都京都は華やかな文化の美しさとは裏腹に、魑魅魍魎たちが跋扈し、陰陽師が活躍した。今も京都の町中には異世界の入り口がいくつも残されているのかもしれない。

本作は京都を主舞台に、登場人物たちが異界と現実を行き来する物語だ。学生のころ通った英会話スクールの仲間5人が、鞍馬の火祭を見物するために集まる。10年前、この祭に6人で出掛け、長谷川さんという女性が姿を消した。残った5人はそのことを忘れられずにいる。

主人公の「私」は待ち合わせまでの時間つぶしに繁華街を歩き、とある画廊に入る。そこに展示されていた銅版画家岸田道生の連作「夜行」に魅せられる。最初に目に入った「夜行―鞍馬」という銅版画は、夜の木立の向こうを列車が走り、その手前に女性が立って右手を上げている。集まった他の4人も、岸田の絵にかつて出合っていた。尾道、奥飛騨、青森、天竜峡。場所はばらばらだが、それぞれが銅版画「夜行」に絡んだ奇妙な体験をしていたのだ。「夜行」とは夜行列車なのか、百鬼夜行のことなのか。失踪した長谷川さんもこの奇妙な事件に絡んでくる。

「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」「有頂天家族」など、京都を舞台に捧腹絶倒、荒唐無稽なストーリーを全開で放つ作者である。これまでの作風ががらりと変わり、しっとりと時にゾッとするような雰囲気の中、物語は進む。光差す朝に向け、夜行の旅が繰り広げられる。


夜行

夜行

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: 単行本



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