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本当の夜をさがして ポール・ボガード [ノンフィクション]

世界の3人に1人が夜空に広がる天の川を見ることができない。夜間照明など人工の光が過剰にあふれる「光害」の影響だ。そんな調査結果をイタリアや米国のチームが昨年、米科学誌に発表した。都市化が進んだ日本では人口の7割が天の川が見えない場所に住んでいるという。

本書によると、「僕たちの暮らす大陸はさながら火事のように燃えている」のだと。夜も人工の光に包まれる欧米は「もはや本当の夜-つまり本当の暗闇-を経験したことがない」と断ずる。

人工照明への依存は、星が見えなくなるだけではなく、不眠症などの疾病を人類にもたらし、星明かりを頼りに飛行する渡り鳥の習性を狂わす。地球の生態系を徐々に蝕んでいると指摘する。

これまで「光は善、闇は悪」と語られることが多かったが、本書では世界の豊かさを象徴するものとして語られる。「夜の音、夜の匂い」の項では、「暗い方がよく聞こえるんだ」という米国先住民の教育者の言葉を引用したり、「夜の香りは豊かで芳醇だ」と賞賛したりする。その闇の文化は日本の谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃」にまで及ぶ。

闇の世界の豊かさを取り戻すため、夜空が美しい地域を「星空保護区」に認定している国際ダークスカイ協会の活動なども紹介している。空を観賞して思索する機会が奪われたわれわれに課せられた課題は多い。夏の銀河を仰いだ先人たちと現代を生きるわれわれとどちらが豊かだったのか、考えさせられる。


本当の夜をさがして―都市の明かりは私たちから何を奪ったのか

本当の夜をさがして―都市の明かりは私たちから何を奪ったのか

  • 作者: ポール ボガード
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2016/04/19
  • メディア: 単行本



天災から日本史を読みなおす 磯田道史 [ノンフィクション]

「天災は忘れたころにやってくる」は、夏目漱石の弟子で物理学者の寺田寅彦の言葉がもとだとされる。ただ、この言葉は彼の著書には出てこない。随筆集「天災と国防」の中の表記にそのもととなる表現があり、それが言いやすいキャッチフレーズに変えられて流布されるようになった。

忘れたころの備えとして、地震や津波、火山噴火といった天災に関する歴史資料をひもとき、教訓を引き出そうとするのが、本書だ。天災の中で、人々がいかに行動し、考えたかを古文書の記述から丁寧に追いかけていく。著者は「武士の家計簿」などで知られた歴史家だから、エピソードも満載だ。

例えば16世紀に日本中部で起きた天正地震。豊臣秀吉は徳川家康成敗の戦争準備を進めていた。秀吉側10万の軍勢に家康の兵力は4万強。勝敗は決したかに見えたが、ちょうどその時に天正地震が発生。秀吉は一夜にして前線基地を失った。あの地震がなければ、徳川の息の根は止まり、歴史の流れは大きく変わっていたという。

富士山は1707年の宝永地震から大規模な噴火はない。この時は関東地域まで灰が降ったが、人々は富士山が爆発したことは知らない。余震が続く中で日中でも暗くなるほどの降灰に戸惑う様子が描かれている。

歴史地震研究会に著者は参加する。理系の地震学者と文系の歴史学者が、ともに過去の地震を研究するユニークな学会である。今後予想される東海・東南海・南海地震に備え、科学と歴史双方の見地から教訓を引き出すことは非常に意義が大きいだろう。



天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 作者: 磯田 道史
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書



夜行 森見登美彦 [文学]

京都市上京区の堀川にかけられている「一条戻橋」は、死者の世界と生者の世界を結ぶ橋だと言われている。平安時代、漢学者三善清行の葬列がこの橋を通った際、駆け付けた息子の浄蔵が棺にすがって祈ると、清行が雷鳴とともに一時生き返ったという。また、陰陽師の安倍晴明は式神をこの橋の下に潜ませ、予言や占いの際に操ったと伝えられる。いわくつきの橋だ。

当時の古都京都は華やかな文化の美しさとは裏腹に、魑魅魍魎たちが跋扈し、陰陽師が活躍した。今も京都の町中には異世界の入り口がいくつも残されているのかもしれない。

本作は京都を主舞台に、登場人物たちが異界と現実を行き来する物語だ。学生のころ通った英会話スクールの仲間5人が、鞍馬の火祭を見物するために集まる。10年前、この祭に6人で出掛け、長谷川さんという女性が姿を消した。残った5人はそのことを忘れられずにいる。

主人公の「私」は待ち合わせまでの時間つぶしに繁華街を歩き、とある画廊に入る。そこに展示されていた銅版画家岸田道生の連作「夜行」に魅せられる。最初に目に入った「夜行―鞍馬」という銅版画は、夜の木立の向こうを列車が走り、その手前に女性が立って右手を上げている。集まった他の4人も、岸田の絵にかつて出合っていた。尾道、奥飛騨、青森、天竜峡。場所はばらばらだが、それぞれが銅版画「夜行」に絡んだ奇妙な体験をしていたのだ。「夜行」とは夜行列車なのか、百鬼夜行のことなのか。失踪した長谷川さんもこの奇妙な事件に絡んでくる。

「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話大系」「有頂天家族」など、京都を舞台に捧腹絶倒、荒唐無稽なストーリーを全開で放つ作者である。これまでの作風ががらりと変わり、しっとりと時にゾッとするような雰囲気の中、物語は進む。光差す朝に向け、夜行の旅が繰り広げられる。


夜行

夜行

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: 単行本



日本国憲法をつくった男 宰相幣原喜重郎 塩田潮 [ノンフィクション]

戦後歴代33人にいる日本の総理大臣で、思い浮かぶのは誰だろうか。サンフランシスコ講和条約を結んだ吉田茂、列島改造論の田中角栄、ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作。挙げていく中で、この人の名前はなかなか出てこないのではないか。戦後2番目の首相となった幣原喜重郎である。衆議院議長も務め、戦後の政治家の中でただひとり、三権の長の二つのポストを経験したにもかかわらず、「忘れられた宰相」となった。それは首相在任期間の短さに加え、大衆的人気とは縁遠い地味な存在だったからだろう。

だが、幣原が日本の歴史を語る上で欠かせないのは、日本国憲法草案に関わった時の首相だからである。本書は幣原の生い立ちから外交官としての生き様を膨大な資料から丁寧に追いながら、日本国憲法草案の舞台裏に迫る。カギになるのは天皇制の維持と戦争放棄・非武装だ。それは連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーと幣原の二人きりの会談の中から生まれた。天皇制が維持できなければ日本は大混乱に陥ることはマッカーサーも承知していた。その代償としてどこの国もなしえなかった平和国家を掲げることは切っても切り離せない事案だった。

憲法改正作業は5カ月足らずの猛スピードで進められた。なぜなら、強力な権限を持つ連合国の極東委員会が終戦翌年の2月に正式発足するからだ。加盟国のソ連やオーストラリア、ニュージーランドは天皇制維持に強く反対している。憲法改正作業が遅れれば、総司令部と日本政府による憲法草案も吹っ飛ぶだろう。その前に憲法を改正して既成事実化しなければならない。焦る総司令部とさまざまな国情に身動きが取れない日本政府のやりとりが生々しい。

さて、「幣原外交」と世界各国から称賛された彼のモットーは善隣外交だった。中国との協調、国際連盟脱退や日独伊同盟への反発。二・二六事件ではその政治姿勢から命を狙われた。平和を唱えることが「弱腰」と言われた時代に、彼は果敢にも信念を通した。その延長線上に今日の日本国憲法が出来上がったと言える。

マッカーサーは後年、幣原の言葉としてこう語った。「世界はわれわれが実際に即さぬ夢想家であるといってあざけり笑うでしょうが、百年後にはわれわれは予言者といわれるようになるでしょう」。憲法9条は、幣原の提案だったと主張する。これについて幣原は否定している。二人とも故人となった今、真相は霧の中だ。


日本国憲法をつくった男 宰相 幣原喜重郎 (朝日文庫)

日本国憲法をつくった男 宰相 幣原喜重郎 (朝日文庫)

  • 作者: 塩田潮
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫



小説 ひるね姫 神山健治 [文学]

日本の高校生は、居眠りをする割合が世界最高水準のようだ。国立青少年教育振興機構(東京)が日本、米国、中国、韓国の4カ国の高校生を対象にした国際調査結果が先日発表されたが、授業中に居眠りをする高校生は日本が15.0%で4カ国中最高だった。米国・中国が3%台で、韓国が約8%というから異常な多さだ。

本作は、そんな居眠りの得意な女子高校生がヒロインの物語だ。公開中のアニメーション映画を神山健治監督自ら書き起こしたノベライズである。舞台は東京オリンピックが迫る2020年の夏、岡山県倉敷市の瀬戸大橋のたもとの町。暮らす明るく活発な主人公の森川ココネは、授業中に昼寝をしては先生に叱られてばかり。寝ている間に見るスリリングな夢が現実と重なっていることに気づき、幼なじみと旅に出るロードムービーだ。

批評性あふれる作品作りで、主にテレビシリーズのアニメで高い評価を受けている神山監督が手掛けた初の劇場版オリジナル作品となる。今回は銃弾が飛び交う殺伐とした神山ワールドとは一線を画している。作風の変化はどこから来るのか。<映像の中で世界を救っても、現実は救えない>。東日本大震災を機にその思いは強まり、アニメーション映画を作る意味を自問していたと監督は語っている。その答えとして出されたのが、自分たちが生活しているリアルな空間の延長線上に物語の舞台を置くことだった。

AI(人工知能)やネットなど監督お得意のテクノロジーは本作でも健在。水中眼鏡型のVR(仮想現実)機器や自動運転システムといった実社会で導入されつつある技術が、物語を進める重要な役割を果たしている。いずれも、神山作品では先端技術が時に人を大いに助けたり、人命を脅かしたりするツールとして存在感を放つ。そこから一貫して感じるのは、技術の壁を乗り越える人間本来の強さと可能性だ。本作に繰り返し出てくる「心根ひとつで人は空も飛べる」の言葉通りに。



小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (角川文庫)

小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (角川文庫)

  • 作者: 神山 健治
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫



リーチ先生 原田マハ [文学]

英国人陶芸家で、日本にも深い関わりを持つバーナード・リーチは今年、生誕130年を迎えた。白樺派の武者小路実篤、志賀直哉、柳宗悦、浜田庄司らと親交を得、柳宗悦の民芸運動にも参加。世界中で陶芸を指導し、東西両文化の橋渡し役を務めたことで有名だ。

本作はそのバーナード・リーチの年譜を忠実にたどりながら、それに関わる人たちとの交流を描いたフィクションである。「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」など、絵画を題材にした小説を次々と発表している原田さんだが、今回は陶芸がストーリー進行の大きな役割を果たしている。作者自身、美術館のキュレーターとして欧米の文化に憧れる時期があったが、しだいにアートや工芸における日本人のアイデンティティーについて考えるようになったという。

作中でも、リーチと柳が口論になるシーンが印象的だ。リーチが言う。「あなたがたは、西洋美術を礼賛しすぎだ。日本にだって、すばらしい美術がある」。栁が言い返す。「礼賛したっていいじゃないか。好いものは好いんだ」。「君は西洋かぶれだ」「あんたは日本かぶれだ」-。時代は大正年間。日本がまだまだ欧米の文化・文明を貪欲に吸収していた時世である。

東西文化の衝突と交流。それを繰り返しながら、物語は進む。インターネットを通じて世界中の誰とでも簡単にコミュニケーションが取れる現代である。当時の人々が異文化に触れるために、どれだけの労力と時間がかかったか。その並々ならぬ決意が伝わってくる。

ちなみに、主人公はリーチではなく、リーチの弟子となった架空の日本人青年。彼の国境を超えた淡い恋と別離。ほろっとするストーリーは、さすがAF(アート・フィクション)の作者を自認する原田さんならではのものだろう。


リーチ先生

リーチ先生

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/10/26
  • メディア: 単行本



楽園の泉 アーサー・C・クラーク [文学]

ロケットを使わずに宇宙へ向かう「宇宙エレベーター」を建造する話だ。高度3万6千キロの静止軌道上からケーブルを繰り出し、人や物資を輸送する。「どんなロケットより百倍も効率がよくなるでしょう」。主人公の技術者がそう力説する。

「2001年宇宙の旅」で知られるSF界の巨匠が1979年に発表したのが本作。物語の重要な役割を果たす宇宙エレベーターは奇想天外な構想ではない。60年代から次々と各国で発表された軌道式エレベーターの科学的知見に基づいて緻密に描かれている。

そんなロマンあふれる構想が現実味を帯びてきた。大手ゼネコンの大林組が2012年、宇宙エレベーター建設という壮大な構想を発表した。総工費約10兆円。完成時期の目標は2050年。計画の命運を握るケーブルの素材として、耐久性の強いカーボンナノチューブが開発されたことで構想は大いに前進。実用化すれば、膨大な燃料を消費する従来のロケットに比べ格安のコストで人工衛星を宇宙に届けられ、宇宙観光も可能になる

来月(2017年4月)には基礎技術となるケーブルの延伸実験が宇宙空間で行われる。静岡大学が開発して昨年打ち上げた超小型衛星を利用し、2基に分かれた衛星間でケーブルがうまく伸びるか調査する予定だ。青い地球を見下ろせる宇宙旅行が実現する「2050年宇宙の旅」が訪れるのはそんな遠い話ではなさそうだ。


楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)

楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)

  • 作者: アーサー・C. クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 文庫



猫の古典文学誌 田中貴子 [文学]

黒猫の子のぞろぞろと月夜かな(飯田龍太)

「猫の恋」「猫の子」は歳時記では春の季語だ。猫が恋盛んに鳴く。子も生まれる。春が猫の発情期なのは、温かい時期のほうが餌も豊富で過ごしやすく子猫の生存率が高いからだという。

本書によると、平安時代には多くの王朝人が猫を飼うようになった。輸入物の「唐猫」は高級品で、錦繍でできた首輪に金の鈴がつけられた。「源氏物語」では、源氏の正妻・女三宮を隠していた御簾を猫がまくり上げてしまい、かつて女三宮が思いを寄せていた柏木とが密通関係となる端緒をつくる。この時、猫は「ねうねう」と鳴く。これは猫の鳴き声の表現として初めて登場した。「(早く)寝よう寝よう」というちょっとエッチな裏の意味が隠されているという。

さて、今は空前の猫ブームといわれる。猫の写真集などのグッズの売れ行きもよく、アベノミクスをもじって「ネコノミクス」と呼ばれている。関西大の宮本勝浩名誉教授の試算によると、商品や観光などを含めた経済効果は年間約2兆を超す。家庭で飼われる猫の数も近く犬を追い抜く見通しだ。もてはやされたり、飽きられたり。猫も大変である。


猫の古典文学誌 鈴の音が聞こえる (講談社学術文庫)

猫の古典文学誌 鈴の音が聞こえる (講談社学術文庫)

  • 作者: 田中 貴子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/11
  • メディア: 文庫



騎士団長殺し 村上春樹 [文学]

東日本大震災から6年がたった。1万5千人以上が亡くなり、今も12万人が自宅に戻れない。これだけの未曾有の大災害の後である。物語の中で「大きな嘘」がつけなくなった。ファンタジーの世界でいくら大活躍をし、世界を救おうとも、現実の世界はまったく救済されない。だから、われわれの日常空間の延長線上で「小さな嘘」を語ることが、近年のストーリーの主流になってきているような気がする。

日常と異空間がつながり、融合するマジックリアリズム文学の旗手である村上春樹がもてはやされるのも、こうした世相が反映しているのだろうか。4年ぶりの書下ろし長編となる本作も、その手法がいかんなく使われている。

妻に離婚を言い渡された肖像画家の主人公が、友人の父が建てた小田原市郊外の家に落ち着く。そこで謎めいた体験をすることになる。その正体は「騎士団長殺し」のタイトルが付いた絵と、近隣の雑木林に掘られた穴だ。絵の中の登場人物が主人公のもとを訪れたり、主人公が穴を通してあちらとこちらの世界を往来したりする。

村上作品には異界との通路が用意されている。「海辺のカフカ」の森、「ねじまき鳥クロニクル」の井戸などだ。今回は夜中に鈴の音が聞こえる「穴」である。いずれの作品においても主人公は、その通路を通る試練を与えられ、それを達成することで成長し、再生を果たす。100パーセントリアルで描かれた「ノルウェイの森」にも通路が用意されていれば、主人公の再生は早まったのではないだろうか。

第1部、第2部の2部構成で、物語も一応の決着を見たが、冒頭の顔のない男が出したリクエストは果たしていない。「1Q84」や「ねじまき鳥クロニクル」のように、将来3巻が出てきそうな予感がなくはない。


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本




騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本



ビブリア古書堂の事件手帖7 三上延 [ライトノベル]

きょうは3.11。東日本大震災から6年を迎えた。この大惨禍のあった2011年3月に出たのが、北鎌倉の古書店を舞台にした小説「ビブリア古書堂の事件手帖」の第1巻である。古書に関して並外れた知識を持つ美貌の古本屋店主・篠川栞子が、客が持ち込む古書にまつわる謎を解いていく日常系ミステリー。実在する古書に関するうんちくっぽい話題と店でアルバイトを始めた五浦大輔とのロマンスが物語を盛り上げてきた。その人気シリーズも震災6年を控えた2017年2月下旬、完結刊となる第7巻がリリースされた。

物語は2010年8月からの1年間を描く。東日本大震災は第4巻のプロローグで登場する。余震がまだ続くある日、ひとりで店番をしていた五浦が1本の電話を取る。篠川家から失踪していた栞子の母親・智恵子からだった。店を見下ろせる北鎌倉駅のホームから掛けてきたのだ。栞子以上に古書に詳しい母親が登場するこのあたりから、篠川家をめぐる秘密もからんで、大河ドラマのごとく物語は太くくねりながら進んでいく。

震災は最終巻でも第1章で語られる。「東日本大震災の後、本を買いに来る客は減った。古書を読む余裕などないのかもしれない」と。震災の影を常に落としながら語られるライトノベルは異色と言えるが、現代の実在する北鎌倉を舞台にした小説だけに、そこは避けられなかったのだろう。

主人公たちの恋愛模様は一応の大団円を見た。番外編などで再登場することもあるというが、後半は二人のイチャイチャぶりが目に余り、もうご馳走様といったところだ。



ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 三上 延
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/02/25
  • メディア: 文庫



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