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Lily-日々のカケラ- 石田ゆり子 [エッセイ]

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「お嫁さんにしたい女優ナンバーワン」で長年通っていた人気女優、石田ゆり子。48歳の今でも、「恋人にしたい女優」ランキングで20代の女優と並んで上位に食い込む。ひと回りもふた回りも年下の女優たちと肩を並べても見劣りしない魅力を持つ女性だ。昨年ヒットしたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に出演以来、再ブレークの様相を呈している。その人気ぶりに当て込んだともいえるフォトエッセイが本書である。発売日に10万部を突破した。

本では日常生活について、あれこれとつづる。料理やペット、お気に入りの服や雑貨など。そんな彼女も「鏡のなかの自分の顔をまじまじと見ると、その年なりの顔になったなあと思います」と切り出す。そして自分が20代のころを振り返る。なぜ若さは美しいのかと。それは人生経験がない中で必死でもがいているからなのだと。

「子どもも、若者も、野生動物も、必死に生きているから美しい。大人だって、美しいと言われるような存在は、ただ安穏と過ごしているわけじゃない。周囲に甘んじない生き方をしているから、美しいのだとわたしは思うのです」

美しさとは素敵な表情だと語る。表情とは心の状態であり、それを整えるのが健康だと考えている。だから食事には気を配る。きちんと食べ、ちゃんと服を選び、笑顔で眠る。日常生活に心がけているさまざまな事柄をたどっていくと、やはり美しさは天性だけのものではないのだなあと感心する。美人は1日にしてならずだ。

ちなみに「わたしは独身主義じゃないです(笑)」と強調する。さて、「奇跡のアラフィフ」を射止める男が出てくるのだろうか。


Lily ――日々のカケラ――

Lily ――日々のカケラ――

  • 作者: 石田ゆり子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/01/30
  • メディア: 単行本


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君たちはどう生きるか 吉野源三郎 [文学]

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漫画版が今年1月に100万部を突破するヒットになっている話題の書だ。流行に便乗して、原作を手に取った。多くの人がレビューしているから、知らない人は少ないだろう。

東京に住む主人公のコペル君こと本田潤一は、中学2年生の15歳。近所に頼りになる叔父さんがいる。大学を出てからまだ間もない法学士。多感な年ごろのコペル君は、学校での出来事や交友関係の悩みのことなど、何でも打ち明ける。それについて気づいたことを叔父さんが、後にコペル君に送ることとなるノートに書き留めるという構成だ。

ある日、友達を裏切り、悔恨の思いに打ちひしがれるコペル君に叔父さんは語る。「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。だから、誤りから立ち直ることも出来るのだ」。何という立派な叔父さんだろう。ナポレオンやガンダーラの仏像など古今東西のエピソードを挙げては、平易な言葉でコペル君を導く。幼いころにこんな叔父さんが身近にいたら、自分も少しはまともな大人になったのではないかとうらやましく思ってしまう。

軍靴が響く1937年、「日本少国民文庫」の1冊として出版された。著書は雑誌「世界」の初代編集長を務めた昭和の進歩的知識人・吉野源三郎。言論の自由が束縛される中、少年少女には訴える余地が残っており、せめて若者には時勢の影響から守りたいという作家・山本有三の依頼で執筆した。

本の中で叔父さんは、コペル君に「立派な大人になれ」という。それはどんな大人か。「自分で考え、自分の言葉で語れる人間」だという。暗い時代になっても権力に押しつぶされようとしても、時流に流されることのない人間に―。そんな著者の訴えが行間から伝わってくるようだ。

その訴えは80年余経ても色あせることはない。得た経験から 「本質」 を理解すること、他人から教えられるのではなく自らの頭で考えること。私たちはどう生きるか、普遍的な命題が問い続ける。


【文庫 】君たちはどう生きるか (岩波文庫)

【文庫 】君たちはどう生きるか (岩波文庫)

  • 作者: 吉野 源三郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1982/11/16
  • メディア: 文庫



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戦争調査会 幻の政府文書を読み解く 井上寿一 [新書]

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昭和の時代、大敗戦を喫した日本は、戦勝国によってその罪を裁かれる。いわゆる東京裁判、BC級裁判である。ところが、日本人の手で日本が仕掛けた戦争の責任を解明する試みが終戦の年の秋から行われていたことはあまり知られていない。それが、幣原喜重郎内閣の戦争調査会である。

戦争調査会の目的は、敗戦の原因と実相を明らかにし、将来にわたって同じ過ちを繰り返さないようにするためだ。軍人や政治家ら関係者からのインタビューと資料収集を重ね、40回以上会議を開いた。翌年の1946年秋、GHQの意向で未完のまま調査は終わったが、全15巻の刊行図書が残された。本書は調査会の資料をもとに、未完に終わった戦争の検証を行おうとするものだ。

なぜ戦争が起こったかを議論するときに、よく登場するのが「運命論」だ。そのルーツを明治維新までさかのぼり、征韓論や台湾派兵など西欧帝国主義の模倣をベースとした領土拡大政策が起源だという説だ。つまり、昭和の戦争は起こるべくして起こったと。ところが、調査会の資料を読み解くと、かならずしも領土や食料事情で戦争をする必要はなかったことが分かる。日中・太平洋戦争を食い止めるチャンスは何度もあった。それがかなわなくても、戦争を早期に集結するチャンスもまた幾度も訪れていた。若槻礼次郎首相の時、与党民政党と野党政友会が関東軍対策として大連立内閣をつくっていれば、満州事変拡大は防げていたという。

歴史に「IF」は通用しない。だが、もしあの時に冷静な判断がなされ歴史の流れが変わっていたなら、広島・長崎の原爆投下、沖縄戦、満州へのソ連侵攻という凄惨な被害をもたらすまでには至らなかっただろう。今から思えば、わずかな当事者の努力が大勢の人々の命を救えたのに。


戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)

戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)

  • 作者: 井上 寿一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/11/15
  • メディア: 新書



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木根さんの1人でキネマ アサイ [漫画]

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映画は大好きだ。だが、映画好きの人は得てして鬱陶しい。おすすめ映画を一方的に語る。単館系を愛しロードショー映画をバカにする。こちらが見た映画を人格ごと全否定する。そんな癖のある映画ファンのあるある話を繰り広げるのが、このコメディー漫画だ。

主人公の木根真知子さんは30代独身で恋人なし。趣味は映画鑑賞と感想ブログ。往年の名作には目も向けず、ゾンビ映画などB級ホラーやアクション系ハリウッド作品に心をときめかす。大好きな映画は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」だ。同居の佐藤香澄さんは、木根さんの熱い映画トークには興味を示さず冷たくスル―するが、気に入ったものがあると設定の裏まで深読みした分析を語って論破する。

毎回読み切りで映画のタイトルがつく。作品の内容よりも木根さんや職場や友人にまつわるエピソードに紙幅が割かれる。スターウォーズシリーズは何作目から見るべきか熱く語る男性上司たち。ジブリ作品は見ないと漏らした木根さんに驚愕の表情で返す職場の部下ら。「テレビアニメって映画の2軍みたいなものでしょ?」という言葉に激怒し、エヴァンゲリオンシリーズのブルーレイディスクを押し付ける女友達。「1人でキネマ」の題名通り、映画友達が欲しくてたまらなかった木根さんの周りには、気づけば大勢のマニアたちがいたのだ。

映画はかくして人を熱くさせる。侃侃諤諤の映画論争を収めようと木根さんが言う「映画は人それぞれだから」の言葉が、さらに火に油をそそぐのがおかしい。映画愛に満ちた人たちの憎めない鬱陶しさがなぜか愛おしい。



木根さんの1人でキネマ 4 (ヤングアニマルコミックス)

木根さんの1人でキネマ 4 (ヤングアニマルコミックス)

  • 作者: アサイ
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: コミック



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兼好法師 徒然草に記されなかった真実 小川剛生 [新書]

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教科書を通じてほとんどの日本人が一度は読むことになる名随筆「徒然草」。その作者である兼好法師の素顔は意外と知られていない。私たちが学生だったころは、作者名を「吉田兼好」と習ったが、実は15世紀に吉田神道を確立した神職・吉田兼倶(かねとも)によって、先祖にまつり上げられたことが最近の研究で明らかになっている。

その研究者である著者が、膨大な史料から自身の新説を再論したのが本書である。着目した史料は、神奈川県の寺に伝わる「金沢文庫古文書」だ。そこからは三十近くなっても職も地位もない兼好が浮かび上がる。実名を「卜部(うらべ)兼好」、仮の名を「四郎太郎」と言ったそうだ。作品のイメージとは異なる俗っぽい人間像が垣間見える。後に世俗を捨てて仏門に入ると、自由の身になった兼好は文学的才能を開花させ、京都を舞台に歌壇でも活躍することになる。

徒然草があまりにも有名になったことから、作者兼好のイメージが独り歩きしてきた感がある。そして伝説となった作者を利用する者も出てきて、ますます作者像はねじ曲げられた。もちろん、現代に残る関連史料は限りがあり、それゆえ諸説が生まれる余地を残した。

本書は史料を一つ一つ取り上げて検証していくのだが、原典や専門用語、固有名詞が頻繁に登場し、最後まで目を通すのは骨が折れた。一般向けとはいえ、歴史や兼好に興味のある人向けの研究書といったところだろう。


兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)

兼好法師 - 徒然草に記されなかった真実 (中公新書)

  • 作者: 小川 剛生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/11/18
  • メディア: 新書



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未来の年表 河合雅司 [新書]

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未来という言葉がバラ色のイメージを持っていたのは、いつまでだっただろうか。多分、前世紀のバブル時代のころまでではなかったか。閉塞感ただよう現代では、未来に希望を持たせるようないい材料が見当たらない。少子高齢化・人口減少社会と言われて久しい。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた経済力も衰退気味だ。「灰色の」と言った方がいいかもしれない未来はどんなふうになるのか。

本書のサブタイトルは、「人口減少日本でこれから起きること」である。今後50年でどんな問題に直面するかを時系列を追って分かりやすく整理している。それによると、1億2千万人余の日本人口は、40年後には9000万人になり、100年もたたないうちに5000万人ほどに減るという。日本は世界史では類例のない急激な人口減問題に直面しているのだ。

数年後には労働人口の落ち込みで技術大国日本の地位が揺らぐ。10年もすると、認知症患者が700万人を突破する。その後は、地方から百貨店や銀行が消滅。深刻な火葬場不足に陥り、自治体の半数がなくなり、人が住まなくなった国土を外国人が占拠する―。目を覆わんばかりの問題は、明日急に来るわけではない。人口減少にまつわる日々の変化というのは、極めてわずかである。ゆっくりとではあるが、確実に国民社会を蝕んでいく。それは国家を根底から揺るがす「静かなる有事」なのだ。

筆者は、産経新聞論説委員。膨大な資料やデータを読み込み、人口減少社会の構造的な問題を解き明かす。例えば独居老人世帯が増えるのは、核家族化や配偶者の死去といった単純な問題ではないという。未婚者の増加や離婚の増加といった要素も複雑に絡み、想像以上に急速に進む。そうすると、これまでのような国や自治体の施策は通用しない。例えば、人口増加を前提としたプランは立てても無駄。老人ホームでなく住み慣れた地域の協力を得て暮らし続ける「地域包括システム」は、独居老人の急増や女性の社会進出を背景に、制度そのものが成り立たなくなるのだと指摘する。

2025年にはついに首都・東京も人口減に向かう。若者の人口流入を受け入れてきたから、高齢者予備軍も当然多い。しかも、地方で独り暮らしになった親を呼び寄せるため、倍々ゲームで高齢者は増えていく。ところが、ビジネス中心のまちづくりを優先してきたため、やがて来るのが「東京医療・介護地獄」だ。

著者は、避けては通れない人口減社会の到来を前提に、今から日本を戦略的に縮める準備を勧める。政治家らリーダーたちがそれに気づき、着実に対策を進めれば、バラ色とは言わないが、光が見える未来が来るはずだと。


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

  • 作者: 河合 雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/14
  • メディア: 新書



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星ちりばめたる旗 小手鞠るい [文学]

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日系米国人3世代にわたる100年間の家族の物語である。1916年、岡山出身の佳乃が同郷の大原幹三郎(大原美術館の創設者・大原孫三郎をもじったの?)のもとへ嫁ぐため、米国に渡って以来、日本人として米国人としてのアイデンティティーに悩まされながら、「敵国人」として迫害を受けた太平洋戦争を経て生き抜く姿を描く。スポットライトが当たるのは、佳乃とその末っ子ハンナ、そして現代に生きる孫のジュンコという母娘だ。

夢と不安と希望を胸に米国に渡った佳乃の世代。そして戦争の激化に伴い、子供達とともに米国内に設けられた強制収用所送りに。日本人であることが罪になる時代だ。それゆえ、幼い頃に戦時期を過ごした末っ子のハンナは日本語や日本的な生活習慣を一切捨て、米国人として生きていくよう子供たちを教育する。だが何の因果か、子供たちのうちジュンコだけが日本に惹かれ、親に隠れて日本語を勉強し、出版社の編集者になる。

物語は佳乃・ハンナの戦前戦後期と、ジュンコを語り部とする現代を行き来する。そして家族の歴史の糸が手繰り寄せられ、ジュンコを思わぬ出会いに誘う。このあたり、時空を超えた家族の物語は、ストーリーテラーの名手・小手鞠るいさんのお手のものの手法である。

自分は日本人なのか、米国人なのか。日系移民たちの苦悩が描かれる。ジュンコはハンナの残した言葉を反芻する。「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです」。流星のように輝いて散る人々の歴史の先に、私たちがいるのだ。

広島原爆投下の是非など日本で語られているのとは全く違う米国側からの歴史認識。立ち位置が変われば、世界の見方も変わる。さて、年が明けて米国ではトランプ政権が2年目を迎えた。相変わらず、「対話より分断と差別」の姿勢である。アジアで、ヨーロッパで、米国で、民族と宗教を背景とした対立が激しさを増す。その図式は姿を変え、形を変え、100年たっても変わりそうもない。そんな現代だからこそ、本書のような物語の存在感が増してくる。


星ちりばめたる旗

星ちりばめたる旗

  • 作者: 小手鞠 るい
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2017/09/14
  • メディア: 単行本



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少女終末旅行 つくみず [漫画]

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ディストピア(ユートピア=理想郷の反対の社会)小説や映画が盛んである。この手の作品は世紀末の終末思想とともに流行するものであるが、まだ20世紀前半になぜもてはやされるのだろうか。きっと東西冷戦終結の後も続くテロや内戦、北朝鮮の傍若無人ぶりを見ていると、世の中は確実に終末に向かっていると思ってしまうのだろう。

この漫画は、文明が崩壊した終末世界を生きる2人の少女のお話である。激しい戦争の後、廃墟になった都市の中を、チトとユーリは半装軌車・ケッテンクラートに乗り、食料と燃料を求めてさまよう。その旅の道中で、わずかに生き残った人たちや、寺院や工場といった文明の痕跡に出会う。

自然界にはもう動植物が死滅している。地球の終わりが近い。食料は倉庫の中から戦闘用の固形食(レーション)が頼りだ。それでも彼女たちは屈託がない。偶然見つけたチョコレートや魚を食べた時の喜び。配管のお湯を利用してお風呂に入れた時の笑顔。終末を忘れさせるような、ほのぼのとした日常が彼女たちを包む。今まで見たことがない風景に感動し、時にじゃれあったり、けんかしたり。一番大切なのは、ふたりで今日を生きることなのだ。

もちろん、彼女たちが無敵なわけがない。相棒とはぐれた時の心細さ、世界にたった独りになってしまうことの怖さが伝わってくる。

連載は新潮社のウェブコミック「くらげバンチ」で読むことができる。年明けには最終回を迎えるのだが、彼女たちを照らす頭上の光がどんな運命をもたらすのか。ディストピア世界の中にもわずかな希望の光を消さないでほしい。2人とともに旅を続けてきた一読者としての願いである。


少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

  • 作者: つくみず
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/11/08
  • メディア: コミック



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たゆたえども沈まず 原田マハ [文学]

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今年は「ゴッホ・イヤー」なのだろうか。10月から映画「ゴッホ 最期の手紙」の公開が始まり、東京都美術館では「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催されている。そして、本書である。アート小説というジャンルを切り開いた彼女の新作の主人公は、ゴッホである。

舞台は19世紀末のパリ。伝統的な絵画から印象派がしだいに受け入れられるようになった時代。後にポスト印象派の旗手として歴史に名を残すフィンセント・ゴッホはまだ無名の画家だった。彼を献身的に支えた弟で画商のテオ。そしてこの兄弟を支えることになる美術商・林忠正と助手の加納重吉。物語はこの4人の友情を軸に展開していく。

東洋と西洋の出会いは、原田の得意とする題材のひとつである。昨年発表した「リーチ先生」では、英国人陶芸家バーナード・リーチと美学者柳宗悦が衝突する場面が印象的だった。今回は日本の浮世絵をはじめとするジャポニズムがパリの美術界、とりわけ印象派やそれに続くゴッホたちに強い影響を与えたことが物語の底流にある。

ゴッホがなぜ西洋美術の中でとりわけ日本で受け入れられるのか? そこには江戸期の日本美術のDNAが埋め込まれているからだと筆者はみているようだ。だから日本美術を世界に売り込んだことで知られる林忠正を役者として立てた。実際にゴッホ兄弟と接点があったかどうか不明だが、そこは史実をベースにフィクションを組み立てる原田ならではの手法で読者を引き込む。そして林の功績に光を当てるために、架空の助手・加納重吉を舞台に上げた。林はジャポニズムに憧れ、日本に渡航したいと願うゴッホに、「あなた自身の日本を見つけ出すべきだ」と国内でモチーフを探すことを強く勧める。

本書には「暗幕のゲルニカ」の時のような謎解きやどんでん返しはない。ゴッホが自らの芸術を見出し、精神を病んで耳を切り、拳銃自殺する―。その史実は変わらないので、ネタバレもない。ただ、そこに至るまでのゴッホの苦悩や喜び、友人たちとの確執などの人間模様が描かれるだけだ。タイトルの「たゆたえども沈まず」とは、幾度の洪水にも耐えて来たパリの街であり、ゴッホが描きたかったセーヌ川を差すのだが、決して順風満帆ではなかったゴッホ兄弟を暗示しているようにも思える。


たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 単行本



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寝る前に読む一句、二句。 夏井いつき・ローゼン千津 [文学]

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夏井いつきという俳人を知ったのは、著書の「絶滅寸前季語辞典」と「絶滅危急季語辞典」である。俳句には季語が不可欠だが、時代の変化につれて自然や生活から消えていくものもある。例えば、蚕(かいこ)やハエたたきなど。絶滅に瀕している季語を使って新しい俳句をつくれば、季語を保存できるのではないか。そんな季語と俳句を列挙した辞典である。それぞれの季語の項目に付け加えられたエッセイがざっくばらんで面白く、ページが進んだ。

彼女はいまや、日本で一番有名な俳句解説者であろう。比較的昔からの夏井ファンからすると、最近、TBSテレビ番組「プレバト!」に出演して人気を集める彼女を見るにつけ、隔世の感がある。書店ではいぜんは探さないと目に入らなかった著書が平積みしてあるし、売れ行きも好調のようだ。本書もその延長線上にあるといっていい。夏井さんがセレクトした名句を初心者でも楽しめるようにした「啓発本」である。

俳句解説の話し相手は、妹で俳人のローゼン千津さん。地元松山で活動する夏井さんとは対照的に国際的チェリストの夫と結婚し、世界を飛び回る。この姉妹の俳句に合わせたぶっちゃけトークは、死ぬまでにやりたい「棺桶リスト」から、経験者は語る「熟年離婚」の話まで多岐にわたる。「いつの間にがらりと涼しチョコレート」(星野立子)の名句について、「これは明治のマーブルチョコレートに違いない」などと思わぬ方向へ話はダッチロールしていく。

姉妹の会話から夏井さん一家のプライベートな側面が垣間見れて楽しいし、ふたりの俳句に関する知識は相当なものだ。だが、まったく俳句の勉強にはならず、啓発本でも教養本でもないことは断言できる。基本的に延々と雑談が続くのだ。タイトルの通り、寝る前に一句、二句、イラスト付きの俳句を眺めながら自分なりの空想を膨らます。雑談が心地よいノイズとなって包んでくれるかもしれない。


寝る前に読む 一句、二句。 - クスリと笑える、17音の物語 -

寝る前に読む 一句、二句。 - クスリと笑える、17音の物語 -

  • 作者: 夏井 いつき
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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